
《「It’s OK!」とコールした後、ノットリリースザボールにならない理由は?》
2019関東大学対抗戦 早稲田(赤)v慶應(黄)
早稲田(赤)陣前での慶應(黄)の攻撃場面。黄6ボールキャリアが赤3に倒され、ボール(上:緑丸)が見えます。
直後、赤9(赤丸)がボールに絡みます(中:緑)。その際黄8(黄丸)が赤9を捕まえます。
そのときレフリーは「It’s OK!」とコール。そのためラックはできていないと判断した赤9はボールに絡み続け、“ジャッカル”を試み続けます。映像を見る限り、黄6ボールキャリアはボールを放さずノットリリースザボールの反則かと思われますが、レフリーは笛を吹かずにプレー継続させます。
その後、赤9は味方に押されて前方に倒れてしまいます(下:赤丸)。直後、レフリーは「ノーハンズ!」とコールし、赤9にボールから手を放すように促します(青丸)。
その後、ボールは黄側に出てプレーは継続していきます。
ここでの疑問は――、
①レフリーの言う「It’s OK!」とは何を指すのか?
(*単純には赤9のボールへのプレーだと思われ、そのため赤9はボールから手を放さずプレーを続けている。仮にこの場面でレフリーがラックと判断したならば、レフリーは「ラック」「ノーハンズ!」とコールするはず)
②「It’s OK!」が赤9のプレーだとするなら、その後黄6のノットリリースザボールの反則にはならないのか?
(*見えなかったという理由はあると思うが、レフリーはボール近辺を注視しているように見える)
③なぜレフリーは赤9に「ノーハンズ!」とコールをしたのか?
(*それまでの赤9のプレーが正当であるとするならば〈かつ黄6の反則がないならば〉、ボールを持った赤9が倒れたからといってボールを放す義務はないはず。なぜならば、この場面では赤9はタックルされて倒されたわけではないため。
仮にこの場面で赤9にボールを放す義務は生じるとするならば、「ラックの中のボールを手で扱ったから」ということになるが、そうであるならば先の「It’s OK!」と矛盾することになり、レフリーはその前の時点で赤9のハンドの反則とすべき。
あるいは、仮に赤9がボールを持たず、ボールを超えて相手側に倒れ込んだとするなら「オーバーザトップ(倒れ込み)」の反則にもなりうるが、その点でも「ノーハンズ!」のコールと矛盾する。
いずれの反則がないのであれば、ここは単にアンプレイヤブルでありスクラムでの再開が妥当と思われる)
※レフリーとしては、この場合の赤9のプレーに関する正しい理解と、目の前の現象がタックルなのかラックなのか、またラックがいつ成立している終了したかの正しい判断が必要でしょう。

この場面では、早稲田側(赤四角)は相手のノットリリースだと思い、慶応側(黄四角)は、相手のラックハンドだと思っているはず。
特にこういったブレイクダウンでの場面は、どちらの反則か否かはプレーヤーにとっては解りにくいので、レフリーはプレーヤーにとってわかりやすいコールをしてあげることが大切です。