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《スローフォワードは、前に投げたか否かだけが問われるものである》

2021トップリーグ トヨタ(白)vNTTコム(青)

 

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トライに繋がったトヨタ(白)15のロングパスがスローフォワードであったか否かがTMOに問われます。スロー映像を確認したレフリーは以下のように言いスローフォワードとしました。

 

レフリー:「(ボールキャリアーが)走りながら前に出てますが、基本的に、投げた地点よりも前にボールを投げてるので、スローフォワードでトライキャンセル」

 

さて、このレフリーの判定は正しいのでしょうか?

スローフォワードに関しては以下のように定義されています。

 

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スローフォワード(Throw forward):プレーヤーが前方にボールを投げるか、または、パスする、すなわち、ボールをパスするプレーヤーの両腕が前方に動くことをいう。】

Throw forward: When a player throws or passes the ball forward i.e. if the arms of the player passing the ball move forward.

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スローフォワードとは文字通り「ボールを前(forward)に投げる(throw)」ということですが、問われているのは文字通り、あくまで「前に投げた」か否かです。

つまり後ろに投げた後、そのボールがどの方向に飛ぶかは問われていません(仮にボールの軌跡が問われるのならば、後ろに投げたボールが突風で前方に移動すればスローフォワードとなるが、そのようなルールはない)。

 

そこで注目すべきは、定義にある【両腕が前方に動く(arms … move forward)】です。

なぜならば、ラグビーの場合、前方に走りながらボールを横に投げれば、“ボールは必ず前方に進む”からです。

この点はラグビー経験者、特にバックスプレーヤーであれば体感していることでしょうが、物理的にも明白なことなのです(理由は慣性の法則による)。

 

その上でこの場面を見た場合、はたして白15はボールを「前に投げている」でしょうか?(青丸)

映像を見ると、少なくともボールに力を加えている右手は後方に振っており(黄矢印)【両腕が前方に動く】には当たりませんし、むしろ通常のパスの動きに見えます。

 

但し、実際にその後のボールの軌跡を追うとボールは明らかに前方に移動しています。この点は上記の通り自然のことであり、このボールの軌跡をもってスローフォワードとする理由はありません。

 

ここでレフリーが言うように「投げた地点よりも前にボールを投げてる」場合をスローフォワードとするならば、走りながらのパスの多く、特にロングパスのほとんどはスローフォワードとしなければならなくなるでしょう。

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[検証1]<ボール投げた地点とキャッチした地点の合成写真>

白10が白11に向かってロングパスをする(赤線)と、慣性の法則が働き、実際のボールの軌跡は前方に向かう(青線)。

通常、白11がボールをパスした(橙丸)後、前方に走ること(青丸)によってボールは後方に投げたように見えるが、実際のボールの軌跡は必ず前方となるのがラグビーのパスである。
特に走るスピードが速く、ロングパスであるほどボールの軌跡は前方に動く。

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[検証2]<同試合の別場面でのパスの軌跡>

■写真左)白10が白11にパス。そのままトライとなる。

ここで白10は明らかにボールを後方に投げており(緑線)、この場面を見て「スローフォワードである」という人は稀なはず(レフリーもTMOにかけることもなくトライを認定)。

 

■写真右)同場面を別角度から見て、白10がボール(緑丸)を投げた地点と、白11がボールをキャッチした地点を比較すると、明らかにキャッチした地点が前方となっている(後方の10mラインを基準とした桃色線参照)。

このように走りながらボールをパスすると、例え後方に投げたとしてもその軌跡は前方へ向かうのであり、「投げた地点」と「キャッチした地点」をもってスローフォワードを判断することは誤りである。

そのためスローフォワードは前記の通り【両腕が前方に動くこと】と定義している。

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[検証3]<ボール投げた地点とキャッチした地点の比較>

■ボールを持った赤9が、タッチライン際の赤15にパス(その後赤15はトライ)。

この場面を見て、「スローフォワード」と思う人はまずいないはず。

赤9の腕も明らかに見後方へ伸び、キャッチャーの赤15も後方に位置している。

しかしながら、写真をよく見ると、ボールが手を離れた地点(3枚目:青丸)よりも、キャッチした地点(6枚目:赤丸)の方が前方となっている。

つまり、この間明らかにボールは前方に進んでいることになる(下の合成写真参照)。

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〔合成写真〕
上の連続写真のうち、ボールが手を離れた地点と、キャッチした地点を合わせてみるとボールは明らかに前方に進んでいる。

それでも、ラグビー経験者であれば、こういったパスを「スローフォワードではない」(むしろナイスパス)と思っているはずで、ルール上でもこういったパスをスローフォワードとは定めていないのである。

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[検証4]<ボール投げた地点とキャッチした地点の比較>

■ボールキャリアー(青丸)からレーシーバー(赤丸)までのパスに関する連続写真(1~5枚目)を見ても「スローフォワード」には全く見えないはず。
しかしながら、パスをした瞬間(写真3枚目)とキャッチの瞬間(写真5枚目)の写真を合成(写真6枚目)して比較すると、ボールは明らかに前方に”飛んでいる”。
それでも、ボールキャリアー(青丸)はボールを前(フォワード)には投げて(スローして)いないのでプレーオンである。