日野(赤)ボールキャリアーがタックルされます(黄丸)。直後、リコー(黒)6(紫丸)がボールをジャッカルしようとしますが、それに対して赤9(青丸)が身体を当ててオーバー。
するとすかさずレフリーは笛を吹き、左手を斜め遠方に前後させます(緑丸)。
(レフリーの声は聞こえないが、解説者は「サイドエントリー」と言う)。
さて、赤9の反則理由はなんでしょうか?
日本ではこういった場面で「サイドエントリー」と言い反則とするレフリーがおり、タックル地点でプレーをする際は自陣側の「ゲート(赤線)」を通る必要があると説明する場合がありますが、実際にはこの赤9を罰するルール(条文)はありません。
例えばタックル後、他のプレーヤーは【ボールをプレーする前に、自チームのゴールラインの方向からタックルに到着(Other players must : Arrive at the tackle from the direction of their own goal line before playing the ball)】しなければならないとされていますが、それはあくまで【ボールをプレーする(playing the ball)】際に関してのもの。ここで赤9はまったくボールをプレーしていません。
(*逆に、ボールをプレーしようとしている黒6は、タックル地点に自陣側の「ゲート(紫線)」に戻っていないように見える)。
あるいは、タックル成立後【タックルでは、少なくとも1名のプレーヤー地面にあるボールの上で立っているときにオフサイドラインが形成される。Offside lines are created at a tackle when at least one player is on their feet and over the ball, which is on the ground.】とされており、この場面でオフサイドライン(黄線)が形成されていたとしても、赤9はそのオフサイドラインの後方からプレーをしています。
仮に、ここで赤9が自陣側の「ゲート(赤線)」を通っていないからペナルティとするならば、赤9が“反則を犯さずに”プレーをするためには、地面に倒れている2人のプレーヤーを踏みつけていくしかありません。はたしてそれが正当なプレーなのでしょうか?
繰り返しますが、赤9がこのような場面(=タック地点の後方から、ボールをプレーするではなく相手をオーバーする場面)で、自陣側「ゲート(赤線)」を通らなければペナルティとなるルール(条文)はありません。
※こういった場面で反則となる可能性があるのは――。
・①タックルされたプレーヤー(ボールキャリアー)の前方からプレーをする「一般のプレーでのオフサイド」
・②タックル時のオフサイドライン形成後に同オフサイドラインの前方からプレーする「タックル時のオフサイド」
・③ラック形成後に同オフサイドラインの前方からプレー、あるいは同ラックに横から入る「ラックでのオフサイド」
――となりますが、この場面ではいずれにも当てはまりません。
(海外の試合でペナルティとなるのは、上記の理由となる場合がほとんど)
●一方で、仮に「タックル地点で相手をオーバーする際には自陣側のゲートを通らないとペナルティ」といったルールがあったとしたら、以下にあるような場面はどうなのか? いずれもペナルティに相当するはずながら、笛が吹かれることなくプレーオンとなっている。はたして上のペナルティ場面との違いはどこにあるのか?
(場面は3場面ながら、類似場面は他の試合も含めてかなり頻発している)