パナ(青)ボールのスクラムからスクラムが動き、レフリーは右手を上げアドバンテージを適用、赤側の反則とします。
この後ボールが出るもレフリーはノーアドバンテージから青にPKを与え、実はその際スクラムがホイールしているようなシグナルを出しながら「回っちゃってる」と言います。
さて、スクラムが「回っちゃった」ら反則となるのでしょうか?
ルールブックには以下のようにあります。
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34.反則が見られないのにレフリーがプレーを止めてスクラムを組み直すのは、以下の場合である
c.スクラムが90度以上回転し、中心線がタッチラインに平行な位置を越えてしまった。
(c. The scrum is wheeled through more than 90 degrees, so the middle line has passed beyond a position parallel to the touchline.)
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通常、スクラムが「回っちゃった」場合は反則となるのでなく、スクラムアゲインとなります(投入は同チーム)。
スクラムが「90度以上ホイールしたら反則」ということはありません。
一方、ここでは【反則が見られないのに】とありますが、レフリーが反則としたとするならばその理由はなんであるのか?
スクラム時の反則に関してルールブックにあるのは以下となります。
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37.スクラムにおける危険なプレーには、以下を含む:
d.スクラムを故意に崩す。
(d. Intentionally collapsing a scrum.)
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スクラムをホイールさせようとして(この時点では合法)、その後スクラムが崩れたならば「故意に崩す」とみなされペナルティになる場合はあります。
では、このスクラムの場合、回した方=回した方はどちらなのか?
このスクラムを見た場合、青のBKラインが左。そ場合「青が回す=赤は回されたくない」のが「常識」
であり、実際スクラム開始前に、赤チームが「(青がスクラムを)回してくるよ!」とコールしている声が聞こえます。
上記の点を鑑みれば、本来であれば以下のいずれかになるはずです。
①スクラムがホイールしただけなら、スクラムアゲイン。
②ホイールを仕掛けてスクラムが崩れたならホイールをした側のペナルティ。
再確認ですが「スクラムが90度以上ホイールしたら反則」ということはありません。
仮にそのようなルールがあるならば、チームによっては意図的に90度以上ホイールしてPKを得ようとする可能性があります。そのような行為を看過することはスクラムでの事故を誘発することになるでしょう。
上)ボール投入直後はスクラムの中心線は真っ直ぐ(黄線)。
中)青が前進した後スクラムの中心線はぼぼ90度ホイールしている(黄線)が、レフリーは黙認。
下)スクラムの中心線が90度を超えた辺りでレフリーはアドバンテージの腕を上げ、中心線は180度に近づく。
レフリーは、赤の何の反則としたのか?
安易にホイールし押し込まれたならば反則とするのは危険である。特に他のレベルでのレフリングに悪影響を与える恐れがある。
レフリーは笛を吹いた後、両腕で全体が回転するような動きを見せ「回っちゃってる」と言う。
この場面を見たものは「スクラムが回ってしまったら」反則と思うはず。
スクラム開始前。
青ボールでバックスラインは左。この場合、青1番が前進しホイールさせるのはチームにとっては常識(緑矢印)(相手FL6番を下げ青SOへのプレッシャーを弱める/この行為そのもが反則に問われることはない)
実際、この後赤チームが「(青がスクラムを)回してくるよ!」とコールしている。
つまり、この場面で赤3番が引いてホイールすることはありえない。ホイールの原因を作ったのが青側であることは明白である。
[追記]
同試合のスクラム場面。
以下のルールはありますが、この場面はペナルティではなくスクラムアゲインとなりました。
【37. スクラムにおける危険なプレーには、以下を含む:
c.相手を故意に持ち上げて宙に浮かせる、または、スクラムから押し上げて出す】